ニューキノロン系抗生物質の特徴について簡単にわかりやすく説明します。
まず、簡単に理解できるように下手ですが漫画をつけました。
ご覧ください。
この記事の内容
漫画~ニューキノロン系抗生物質の特徴~
以上が漫画になります。
もう少し詳しく知りたい方 は、関連記事の下に漫画では説明しきれなかったことを書きました。
ご覧ください。
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ニューキノロン系抗生物質とは?
ニューキノロン系抗生物質とは、キノロン系抗生物質をフッ素化して人工的に作り出された抗生物質のことを言います。
キノロン系抗生物質とは、構造式(物質の形)にキノリンという骨格を持ち、その一部をカルボニル基(炭素と酸素が二重結合したもの)で置換したものをいいます。
キノロン系をオールドキノロン系とも呼びます。
そして、ニューキノロン系はフルオロキノロン系(フルオロ=フッ素)とも呼んだり、第二世代、第三世代キノロン系とも呼んだりします。
ニューキノロン系抗生物質の商品は?
キノロン系
- ナリジクス(商品名:ウイントマイシン)
- ピペミド酸(商品名:ドルコール)
最初に登場したキノロン系抗生物質がウイントマイシンです。
ここから他のキノロン系抗生物質やニューキノロン系抗生物質が開発されていきました。
キノロン系抗生物質は、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎、淋病などの尿路感染症で使用されることが多いです。
ニューキノロン系
- ノルフロキサシン(商品名:バクシダール)
- オフロキサシン(商品名:タリビッド)
- レボフロキサシン(商品名:クラビット)
- ロメフロキサシン(商品名:バレオン、ロメバクト)
- シプロフロキサシン(商品名:シプロキサン)
- パズフロキサシン(商品名:パシル、パズクロス)
- プルリフロキサシン(商品名:スオード)
- ガレノキサシン(商品名:ジェニナック)
- シタフロキサシン(商品名:グレースビット)
- トスフロキサシン(商品名:オゼックス)
- モキシフロキサシン(商品名:アベロックス)
キノロン系をもとに開発されたニューキノロン系抗生物質はさまざまな細菌に対して効果を持つようになりました。(抗菌スペクトルが広いと言います)
初めて開発されたニューキノロン系抗生物質は、バクシダールです。
薬局で働いていてよく見る薬はクラビット、タリビット、ジェニナック、オゼックスといったところでしょうか。
僕の働く薬局では、クラビットは膀胱炎で、タリビット(点眼液)は中耳炎で、ジェニナックは大人の風邪で、オゼックスは子供の風邪で処方があります。
ニューキノロン系抗生物質の効果は?
緑膿菌
ニューキノロン系抗生物質は緑膿菌(りょくのうきん)に対して効果があります。
緑膿菌は、日和見感染症で特に問題となりやすい原因菌です。
そのため、耐性を獲得させないようにするためにも安易に使用すべきではありません。
健康な人には問題とならない細菌が、免疫力が低下している人(高齢者、HIV患者、免疫抑制剤服用している人など)に対して起こす感染症のことを言います。
結核菌
ニューキノロン系抗生物質は、結核菌に対しても効果があります。
しかし、結核の標準的な治療は数種類の抗結核薬を6カ月間服用することです。
安易にニューキノロン系を使用する結果、結核の早期発見の妨げになったり、耐性菌の出現で結核の治癒率が落ちることもあります。
肺炎球菌
ジェニナックやアベロックスは市中肺炎の原因である肺炎球菌に対する第一選択薬です。
肺炎球菌には、グレースビットやオゼックスやクラビットも有効であり、これらをまとめてレスピラトリーキノロンと呼びます。
レスピラトリーは、”respiratory”とつづります。つまり”呼吸器の”という意味です。
ニューキノロン系抗生物質の作用機序は?
ニューキノロン系抗生物質は、DNAジャイレースやトポイソメラーゼⅣと呼ばれる、細菌のDNA合成酵素を阻害することでDNA合成を阻害します。
そのためニューキノロン系抗生物質は、核酸合成阻害薬と呼ばれるグループに属します。
DNA合成阻害により細菌を退治しますが、これを殺菌作用と呼びます。
(これと反対の概念が静菌作用 ・・・細菌の増殖を抑制する作用です)
ニューキノロン系抗生物質の殺菌作用は、濃度依存的に効果を発揮するため1日数回服用するよりは1日1回で高用量服用するパターンが多いです。
ニューキノロン系抗生物質と違って、マクロライド系は抗生物質には静菌作用があります。
ニューキノロン系抗生物質の副作用は?
代表的なものとしては腹痛や下痢などの消化器の副作用がでることが多いです。
これは、抗生物質が腸内細菌のバランスを崩すためです。
そのため予防として整腸剤も一緒に服用することもあります。
薬は肝臓で分解されることが多いため、肝機能障害の副作用がでることもあります。
具体的には、ALT(GPT)、AST(GOT)、γGTP、LDH、Al-Pの検査値が上昇したり、黄疸がでます。
症状が重い副作用はアナフィラキシーショック、偽膜性大腸炎、中毒性表皮壊死融解症などがあります。
以上の副作用は、抗生物質全般的に起こる副作用です。
消化器以外の副作用が起きる確率は非常に低いです。
ニューキノロン系抗生物質に特徴的な副作用としては、アキレス腱に炎症が起きたり断裂が起きたりすることがあるようです。
アキレス腱の痛みが出てきたら服用を中止して医師か薬剤師に相談しましょう。
ニューキノロン系抗生物質との飲み合わせは?
NSAID
非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID)との併用によって痙攣が起きることがあります。
これは、ニューキノロン系抗生物質が、GABA受容体という場所を阻害することで、NSAIDの作用が強くなるためと考えられています。
特に、イブプロフェン(商品名:ブルフェン)、フルルビプロフェンアキセチル(商品名:ロピオン)、ケトプロフェン(商品名:カピステン、アネオール)は併用禁忌の場合もあるため服用している場合は医師または薬剤師に服用していることを伝えるようにしましょう。
チザニジン
シプロキサンと筋弛緩薬のチザニジン(商品名:テルネリン)は併用禁忌です。
これはシプロキサンがチザニジンの肝臓での代謝を阻害して、チザニジンの作用が増強するためです。
抗不整脈薬
アベロックスとクラスⅠA、クラスⅢの抗不整脈薬は併用禁忌です。
これはQT延長と言って不整脈の症状が悪化する可能性があるためです。
制酸剤
アルミニウム(Al)やマグネシウム(Mg)を含む制酸剤との併用で、ニューキノロン系抗生物質がキレートという物質を形成することで抗生物質の吸収が落ちて効果が弱くなることがあります。
併用禁忌ではありませんが、服用時間を2時間以上あけるとよいでしょう。
ニューキノロン系抗生物質の注意点は?
小児や妊婦には禁忌(絶対に服用してはいけないということ)である場合が多いです。
あとがき
ニューキノロン系抗生物質は、さまざまな細菌に対して効果があります。
そのため、細菌による病気が考えられる時、その細菌が何なのかを同定しなくてもニューキノロン系抗生物質を飲んでおけばとりあえず効果があると考えることもできます。
乱暴な言い方をすれば、病気の知識がなくてもニューキノロン系抗生物質を服用しておけばなんとかなるだろう、ということです。
しかし、効果の高い抗生物質を安易に処方してしまうのは危険です。
なぜなら、抗生物質の乱用により耐性菌が出現してしまうと、本当に抗生物質が必要な時に効果を発揮できなくなってしまうからです。
名医は本当に必要な時を見極め抗生物質を処方する
普通の医師はとにかく抗生物質を処方する
だと思っています。
(この言葉のポイントは、”普通の医師”というところでしょうか・・・)
ちなみに抗生物質に関しては以下の本がおすすめです。
わかりやすい説明で読みやすかったです。
以上になります。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。