ピロリ菌除菌薬も機能性ディスペプシアの治療のために処方されることがある。
この記事では、機能性ディスペプシアの治療薬について説明します。
まず、簡単に理解できるように下手ですが漫画をつけました。
ご覧ください。
漫画~機能性ディスペプシアの治療薬~
以上が漫画になります。
もう少し詳しく知りたい方 は、下に漫画では説明しきれなかったことを書きました。
ご覧ください。
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酸分泌抑制薬
酸分泌抑制薬というのは、胃酸の分泌を抑制する薬です。
胃酸の分泌を抑制すれば、胃の痛みや灼熱感の改善が期待できます。
また胃酸が十二指腸に流れると十二指腸は胃の運動を低下させるシグナルを出します。(十二指腸ブレーキ)
そのため胃酸の分泌を抑制すれば、胃の運動が改善し、胃もたれや早期満腹感も改善されることが期待できます。
酸分泌抑制薬には①プロトンポンプ阻害薬(PPI)、②ヒスタミン(H2)受容体拮抗薬、③ムスカリン受容体拮抗薬があります。
①プロトンポンプ阻害薬(PPI)
- エソメプラゾール(商品名:ネキシウム)
- オメプラゾール(商品名:オメプラゾン、オメプラール)
- ボノプラザン(商品名:タケキャブ)
- ラベプラゾール(商品名:パリエット)
- ランソプラゾール(商品名:タケプロン)
胃酸の分泌は、プロトンポンプというものが関わっています。
これを阻害して胃酸の分泌を抑制します。
②ヒスタミン(H2)受容体拮抗薬
- シメチジン(商品名:タガメット、カイロック)
- ニザチジン(商品名:アシノン)
- ファモチジン(商品名:ガスター)
- ラニチジン(商品名:ザンタック)
- ラフチジン(商品名:プロテカジン)
- ロキサチジン(商品名:アルタット)
H2ブロッカーとも言います。
ヒスタミン受容体は胃の壁にありこの受容体が胃酸の分泌に関与しているため、この受容体をブロックすることで胃酸の分泌を抑制します。
③ムスカリン受容体拮抗薬
- ピレンゼピン(商品名:ガストロゼピン)
- チキジウム(商品名:チアトン)
ムスカリン受容体というのは、副交感神経が働くときに働く受容体です。
胃に存在するムスカリン受容体にシグナルが入ると、胃酸の分泌が促進します。
ムスカリン受容体拮抗薬はこのシグナルを抑制するため胃酸の分泌が抑制されます。
酸分泌抑制作用の強さは、プロトンポンプ阻害薬>ヒスタミン受容体拮抗薬>ムスカリン受容体拮抗薬の順です。
プロトンポンプ阻害薬は、作用時間も長いです。
ムスカリン受容体拮抗薬の酸分泌抑制作用は弱いので、酸分泌抑制のために使用されるケースは少ないです。
ただし、今のところ、機能性ディスペプシアに関しては、プロトンポンプ阻害薬に一番効果があるのかまでは分かっていません。
また、どの薬も機能性ディスペプシアの保険適用はないため、この薬を処方する場合は、胃潰瘍や逆流性食道炎などと病名が付けられます。
消化管運動機能改善薬
消化管の運動機能改善し、内臓の知覚過敏も改善することが期待できます。
消化管運動機能改善薬には、①コリンエステラーゼ阻害薬、②ドパミンD2受容体拮抗薬、③5-HT4受容体作動薬、④オピオイド受容体作動薬があります。
①コリンエステラーゼ阻害薬
- アコチアミド(商品名:アコファイド)
副交感神経が作動すると、胃の運動が高まります。
この神経の伝達物質がアセチルコリンです。アセチルコリンを分解するのがコリンエステラーゼです。
つまりコリンエステラーゼ阻害薬はコリンエステラーゼを阻害することでアセチルコリンが分解されるのを防ぐことができます。
この結果、副交感神経が活発になり胃の運動機能が高まります。
アコファイドは唯一、機能性ディスペプシアの保険適用がある薬です。
ただし胃の痛みや灼熱感には効果が見られません 。
②ドパミンD2受容体拮抗薬
- メトクロプラミド(商品名:プリンペラン)
- ドンペリドン(商品名:ナウゼリン)
- イトプリド(商品名:ガナトン)
副交感神経の作動にはドパミン受容体も関与します。
ドパミン受容体にシグナルが入ると、アセチルコリンの分泌が抑制されます。
そのためこの受容体を阻害すれば、アセチルコリンが分泌され副交感神経が働き、胃の運動機能が高まります。
③5-HT4受容体作動薬
- モサプリド(商品名:ガスモチン)
5-HT4受容体というのは、セロトニンという物質を受け取る受容体です。
副交感神経の作動にはこのセロトニン受容体つまり5-HT4受容体も関与します。
5-HT4受容体にシグナルが入ると、アセチルコリンの分泌が促進されます。
(逆にドパミン受容体は、シグナルが入るとアセチルコリンの分泌は抑制される)
そのためこの受容体を作動させる薬を服用すれば、アセチルコリンが分泌され副交感神経が働き、胃の運動機能が高まります。
④オピオイド受容体作動薬
- トリメブチン(商品名:セレキノン)
腸管の運動が低下している状態においては、オピオイドμ(ミュー)受容体に作用してアドレナリンの分泌を抑制し、その結果アセチルコリンの分泌を促進させます
ピロリ菌除菌薬
ピロリ菌の除菌が、機能性ディスペプシアの症状の改善に有効であることが分かっています。
しかし、除菌が成功しても全員に症状の改善が見られるわけではありません。
しかし、ピロリ菌は胃がんを引き起こすこともあるため、とりあえずピロリ菌がいるようなら除菌すべきです。
ピロリ菌の除菌薬では、2種類の抗生物質と1種類のプロトンポンプ阻害薬を1週間服用します。
抗うつ薬、抗不安薬
酸分泌抑制薬や消化管運動改善薬で十分な効果が得られない場合、補助的に抗うつ薬、抗不安薬が使用されるときがあります。
機能性ディスペプシアは、ストレスによって引き起こされていることが多く抗うつ薬、抗不安薬の使用で症状が改善することもあります。
抗不安薬のタンドスピロン(商品名:セディール)に症状の改善があるという報告があります。
また抗うつ薬でよく使用される選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)に効果があるという報告はまだありません。
漢方薬
機能性ディスペプシアの症状の改善に、漢方薬が有効であるという報告があります。
具体的には、六君子湯(りっくんしとう:胃の膨満感、運動機能の改善)と半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう:胃の痛み、もたれの改善)です。
プラセボ効果が大きい
機能性ディスペプシアは、プラセボ(偽薬)で一定の効果が見られます。
確かメーカーから聞いた話では3割ほどに効果が出てしまうようです。
プラセボ効果が高いため、ガスモチンやガナトン の試験では、有意差(統計学的に効果があるといえるほど差が付いていること)がつけられなかったようです。
一方で、アコファイドは有意差がつけられました。
機能性ディスペプシアの友人がいれば、アメ玉をあげてみるといいかもしれません。
あげるときは、「これは機能性ディスペプシアの薬で抜群に効果がある」と言って渡すのです。
これで機能性ディスペプシアの症状がもしかすると改善するかもしれません。
以上になります。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。