スキルアップを目指す薬剤師
『薬剤師としてスキルをあげるにはどの本を読めばいいんだろ?
おすすめの本ないかな?』
その疑問に答えます。
僕は薬剤師歴10年以上あります。
そして現在は調剤薬局の管理薬剤師を5年ほどさせていただいています。
この記事では、僕が今まで出会った数ある本の中で薬剤師の勉強に役立つおすすめの本を紹介したいと思います。
ぜひご覧ください。
この記事の内容
1.新人やブランク明け薬剤師の勉強におすすめの本
あまり知識に自信がない新人さんや、ブランク明けの薬剤師におすすめ本を紹介していきます。
1-1.薬局で使える実践薬学
内容説明
著者の山本雄一郎氏は日経DI「ソクラテスがやってきた」というコラムを書いている人です。ご存知の人も多いのではないでしょうか。この本を読めば、添付文書通りの事しか言えない薬剤師から脱却することができます。
なぜかというと、日々の業務でぶちあたる疑問を薬学的な視点からどのように考えればよいか解説がされているからです。医師や患者さんに質問されたとき、よく添付文書を調べてその通りに答える薬剤師がいます(僕です)。でも、この本に基づく考え方を持てれば、さまざまなことを自分で考え答えを導き出すことができます。
この本は月ごとにテーマが決まっていて、広範囲でしかも深く説明がされています。また、対話形式で書いてあるので、非常に楽しく読むこともできます。448ページのB5版で厚さ約3センチとボリュームのある本ですが、読めば知識が血や骨となって自分の中に取り込まれ、レベルアップした気持ちにさせてくれます。
おすすめしたい薬剤師
- 自分の頭で考えるのが苦手な薬剤師
- 添付文書ばかり見ている薬剤師

1-2.介護スタッフのための安心!薬の知識
内容説明
近年の超高齢化社会に伴って介護スタッフは増加しています。この本はそういった介護スタッフ向けに薬の不安や疑問を解決するために書かれた本です。介護スタッフのために作られた本ですが薬剤師も読むべきです。
なぜなら薬剤師に当然として持っていてほしい知識がそこに書いてあるからです。具体的には、薬のトラブルの対処法、薬の基本的な知識、薬の疑問、様々な疾患の簡単な説明、その疾患で使われる薬の説明などです。
基本的な知識ならすでに知っているのでいらないという意見もあるかもしれません。しかし、他の職種の人がどういうことを疑問に思っているかを知ることができます。 また、非常にわかりやすい言葉で解説してあるので、どういふうに薬剤師が他職種の人に説明すればいいかも参考になります。多職種連携の重要性が叫ばれている昨今、薬剤師にもぜひ読んでほしい本です。
おすすめしたい薬剤師
- 基本的な知識不足を補いたい薬剤師
- 基礎からやり直したい薬剤師

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2.服薬指導の勉強におすすめの本
薬剤師の中で服薬指導のスキルを高めたい人におすすめの本を紹介します。
2-1.薬効別 服薬指導マニュアル
内容説明
この本の対象者は、薬学部を卒業したばかりの薬剤師です。
なぜならこの本に書かれている内容は、薬効別に患者さんが理解しやすい言葉で説明がなされているからです。学校の授業や国家試験の勉強で覚えるのはかなり固い言葉が多いと思います。そこで覚えた言葉をそのまま患者さんに説明したのでは患者さんも「?」となるはずです。患者さんが薬について正しく理解してもらうためには難しい言葉を噛み砕いて説明することが大切です。
この本では、患者さん向けにどのような言葉を用いて説明すればよいかわかりやすく書かれています。この本に書いてある通りに患者さんに説明しても問題ないでしょう。この本を読めば、薬効だけでなく、副作用についても副作用の名前をそのまま伝えるのではなく、その初期症状をわかりやすく、そして患者さんが怖がらないように身近な言葉で説明することができるはずです。
薬学部を卒業したばかりの薬剤師と書きましたが、難しい言葉を使って頭がいいと見せたがるベテラン薬剤師であるあなたにもぜひ読んでほしい本です。
おすすめしたい薬剤師
- 説明の苦手な薬剤師
- 難しい言葉を使いたがる薬剤師

2-2.保険薬局のためのハイリスク薬説明支援ガイドブック
内容説明
ハイリスク薬についての服薬指導がうまくなる本です。
著者は日本薬業研修センター医薬研究所の所長である堀美智子先生です。テレビでも見かけたことがある人もいるのではないでしょうか?
薬局でハイリスク薬の算定をしていると、投薬時に何をチェックして、薬歴に何を記載すればいいかわからなくなることがあると思います。この本は、その悩みを解消してくれます。注意すべき副作用や患者さんへのアドバイスも記載があって投薬のときに必ず役に立つ本でしょう。
おすすめの薬剤師
- ハイリスクを算定している薬局で働く薬剤師
- ハイリスクの個別指導の対策を学びたい管理薬剤師

2-3.患者さん対応のプロをめざす! 「選ばれる薬剤師」の接遇・マナー
内容説明
患者さんの接遇スキルを高めるために読む本です。
服薬指導のスキルを高めるためにはまず、患者さんに対する接遇やマナーがしっかりしていなければなりません。症状を聞くにしても患者さんが不快に思わないように対応する必要があるからです。調剤薬局で働く薬剤師の中には、言葉遣いが悪い人もいます。そういった薬剤師が呼んでもいいと思います。
患者さんとの会話が弾むコツや、疑義照会の方法や、かかりつけ薬剤師の同意書の取り方まで書かれており服薬指導の基礎の基礎を学べます。
大手の調剤薬局に就職しない限り接遇マナーをしっかり学ぶことはできません。この本をきっかけに接客態度を見なおしてみるのもよいでしょう。
おすすめの薬剤師
- 患者対応がまずい薬剤師
- かかりつけ薬剤師の同意書がとれない薬剤師

3.在宅の勉強におすすめの本
在宅に興味のある薬剤師におすすめの本を紹介していきます。
3-1.在宅医療Q&A
内容説明
在宅における疑問点をQ&A方式で記載されています。
在宅をまだ経験したことのない薬剤師が、安心して在宅を始められるように解説がされています。例としては、在宅を開始するのに必要な書類や心構えなどです。そして、在宅をしているときに、思った疑問も解決してくれます。在宅の法律に関することから実務に関することまで幅広く網羅されているためこの一冊さえあれば、在宅を始めるには十分でしょう。
近年は、多職種連携が大切だと言われています。でも大切だと言われても僕たち薬剤師は何をすればよいかイマイチわかりませんよね? この本には連携のポイントなども書いてあります。この本で、看護師やケアマネージャーと充実した連携をとることができるようになるでしょう。
すべて読むことが望ましいですが、目次を見て自分が知らない部分だけを読んでも非常に勉強になります。A5版なのでコンパクトです。
おすすめしたい薬剤師
- これから在宅を始める薬剤師
- 在宅を始めたが様々な疑問点でてきた薬剤師

4.小児科の勉強におすすめの本
小児科の前の薬局で働く薬剤師におすすめの本を紹介していきます。
4-1.はじめてママ&パパの0〜6才病気とホームケア
内容説明
子供がよくかかる病気について勉強できる本です。
病気のメカニズムや症状、家で注意すべきことなどが解説されています。薬剤師向けではなく初めて子供を持つ親に向けて書かれた本なので、理解しやすいです。いきなり全部読まなくても薬局に置いておいて疑問に思う病気などが出てきたときに調べてもいいでしょう。
親に向けてアドバイスがたくさん書かれていて、それがそのまま服薬指導に使うことができます。一般の人に向けた本であるにもかかわらず、文字数も多く読み応えがありますが、写真や図表なども多く取り入れられていて楽しく読むことができる本です。
おすすめしたい薬剤師
- 小児科前の薬局で働き始めた薬剤師
- 子供がかかる病気を全般的に知りたい薬剤師

4-2.小児科領域の薬剤業務ハンドブック
内容説明
小児科に関する薬剤師の業務について、かなり幅広く詳しく書かれている本です。
服薬指導に関する章では、調剤薬局におけるかかりつけ薬剤師としての業務、また病院では病棟薬剤業務を手助けしてくれるでしょう。小児に使われる薬についてももちろん広範囲にそして、深いところまで掘り下げて記載があります。
付録には、小児の薬の飲ませ方が書いてあります。具体的には、粉薬・シロップの飲ませ方、坐薬や点眼液の使い方などです。薬局でよく質問されることのほとんどを網羅しています。
小児薬物療法認定薬剤師制度についての記載もあり、小児科関連ではたらく薬剤師の教科書ともいえる本だと思います。小児科に関しては、添付文書やDIには書かれていない知識を必要とする場面があります。この本は、そういった不安を解消してくれるでしょう。
おすすめしたい薬剤師
- 小児科の前で勤務する薬剤師
- 病院で小児科関連の薬を扱う薬剤師

4-3.乳幼児・小児服薬介助ハンドブック
内容説明
この本は、読み物としてではなく薬局に置いておいて困った時に開いてほしい本です。タイトルを読んでわかるとおり、子供にどうやって薬を上手に飲ませることができるかが書いてあります。
どんなに良い薬であっても、味が苦くては子供が飲まないのでは意味がありません。最近ではメーカーが味を改善していますが、それでも子供によってはまったく飲んでくれないといったケースがあります。
そういったときにこの本を開いてほしいのです。自分が勤務する薬局で使っている薬を調べるのもよいでしょう。例えば粉薬の中には、ピーチジュースと混ぜるとおいしくなるものもあるようです。新しい発見があって面白いです。こういった知識をもっていると「さすが薬剤師!!」と言ってくれそうですね。
できない薬剤師は、ただお薬の効果と用法用量を説明するだけ。できる薬剤師の分かれ目はそこからさらにプラスの情報を言えるかどうかです。この本を手にとってできる薬剤師になって困った子供を持つ母親に喜んでもらいましょう。
おすすめしたい薬剤師
- 小児科の前で勤務する薬剤師
- 粉薬を嫌がる子供の対応に困った薬剤師

4-4.実践小児薬用量ガイド
内容説明
小児薬の用量がわからないときはありませんか?この本は、体重1kgあたりの小児薬用量の記載が分かりやすくまとめられています。
用量確認に使うのは原則添付文書ですが、忙しい業務中に添付文書の記載を確認するのは時間がかかってしまいます。薬局にこの本を1冊置いておけば、困った時にすぐに調べることができるでしょう。
薬効別にまとめられているので、疑義紹介などで医師に代わりの薬を提案するとき、その薬の用量を瞬時に伝えることも可能です。この本のすごいところは、漢方薬、吸入薬、軟膏などの外用薬についての用量もまとめられていることです。
用量だけでなく、調剤や服薬指導の際にも必要となる注意が必要なことも書かれています。本のサイズも、コンパクトで白衣のポケットに入れることだってできて持ち運びに便利です。
おすすめしたい薬剤師
- 小児用量を熟知できていない薬剤師
- 小児用量をいちいち添付文書で調べる薬剤師

5.皮膚科の勉強におすすめの本
皮膚科の前の薬局で働く薬剤師におすすめの本を紹介していきます。
5-1.アトピーの薬を減らす本
内容説明
皮膚科メインの薬局に勤務している薬剤師は、まずアトピーについて熟知している必要があります。この本はアトピーに使用される治療薬などの情報が網羅されていて、現場ですぐに役立ちます。薬の違いをわかりやすく説明してあり、また、同じ軟膏でもメーカーによる違いについても記載があります。
さらに、この本を読むことで、副作用のある薬を正しく使って、効果的に減らしていく方法も知ることができます。
アトピーに関する質問は小児科にかかった子供の母親からうけることもあります。そういう意味では、小児科前の薬局に勤務する薬剤師にもおすすめですね。
おすすめしたい薬剤師
- 皮膚科・小児科前の薬局に勤務する薬剤師
- アトピーに強くなりたい薬剤師

6.一つ上のレベルを目指す薬剤師におすすめの本
薬剤師としてさらなる高みを目指す方におすすめの本を紹介します。
6-1.腎機能別薬剤投与量POCKETBOOK 第2版
腎機能に基づいた薬の用量をチェックすることのできる本です。
医師との合同勉強会で、医師に質問したことがあります。『医師は僕たち薬剤師になにを求めていますか?』と。そのときの答えは、『添付文書に書いてあること以上に、患者さんの腎機能などから本当にその患者さんに適切な用量かもチェックしてほしい。』というものでした。回答してくれた医師は日頃の業務が多すぎて、腎機能のチェックまで頭が回らないので、この領域を薬剤師にお願いしたいということでした。貴重なアドバイスだと思います。医師から必要とされる薬剤師になるために腎機能に影響の受ける薬剤の知識を深めましょう。
おすすめの薬剤師
- 医師に必要とされる薬剤師になりたい人
- 腎機能に基づく用量のチェックをしっかり行いたい薬剤師

6-2.アルゴリズムで考える薬剤師の臨床判断
内容説明
プライマリケアの勉強のために読む本です。
あなたは、患者さんから『頭痛がする』と言われたときに、どんな対応をしますか?頭痛薬をすすめますか?受診を勧めますか?それとも救急車を呼びますか?
患者さんから症状の相談を受けた時に、薬剤師としてどのような対応をとればいいか、そういったことを学べる本です。症状ごとにどんな病気が考えられるかが解説されており、病気ごとにどんな対応をとるべきかアルゴリズムでわかりやすくまとまっています。
プライマリケアは、かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師として今後必要とされるスキルです。そのスキルを勉強するために最初に手に取った方がよいと言える本でしょう。
おすすめの薬剤師
- かかりつけ薬剤師として患者さんの相談にうまく対応したい人
- プライマリケア薬剤師の認定を取りたい人

6-3.薬剤師研修ハンドブック(基礎編)
内容説明
プライマリケアについて本格的に学べる本です。
さきほど紹介した『アルゴリズムで考える薬剤師の臨床判断』は、プライマリケアについての導入だとしたら、この薬剤師研修ハンドブックはさらに詳しくプライマリケアについて知ることができます。
この本は、日本プライマリケア連合学会が書いている本で、この学会が薬剤師として身に付けたほしい知識がまとめられています。具体的には、緊急の処置が必要なときの対応や食事や禁煙などの生活指導、メンタルヘルスなど多岐にわたります。チーム医療のために薬剤師がどうあるべきかについてもまとめられています。
おすすめの薬剤師
- プライマリケア薬剤師の認定を取りたい人
- 患者さんからのあらゆる相談にうまく対応した薬剤師

6-4.日本プライマリ・ケア連合学会基本研修ハンドブック
内容説明
この本もプライマリケアを本格的に勉強したい人向けです。さきほどから『プライマリケアばかりだな・・・』と思っている人もいるかもしれません。でも僕は、今後薬剤師が伸ばしていくべきスキルはプライマリケアの領域ではないかと思っています。この領域を究めることで、患者さんからの健康相談に上手に対応できるからです。ここで紹介する本も、日本プライマリケア連合学会が書いています。どちらかといえば薬剤師というよりプライマリケアを勉強した医師向けの本ではあります。しかし、プライマリケアのスキルを伸ばすための心構えや患者さん対応の注意点などを学ぶことができます。
おすすめの薬剤師
- プライマリケア薬剤師の認定を取りたい人
- 患者さんからのあらゆる相談にうまく対応した薬剤師

6-5.高齢者総合診療ノート
内容説明
平均寿命と健康寿命の差を受けるために我々医療関係者は高齢者のどのような点に注意しながら医療に当たればよいかということが記載されています。
具体的には、高齢者に多い症状からどのような病気が考えられるか、また反対に高齢者に多い病気からどのような症状が考えられるかが書いてあります。
さらに関連する薬の注意点、病気の疫学・症状・治療・生活上の注意点など情報が満載です。
この本は、高齢者の診療において、医師・看護師・理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 管理栄養士などの他の職種の人も知る必要のある情報も書かれています。
薬剤師がこの本を読めば、他の職種が知りたいと思う情報を提供できるようになるということです。
おすすめの薬剤師
- 介護施設などに入所の患者さんの薬を請け負っている薬剤師
- 高齢者にきめ細やかなサービスを提供したい薬剤師

6-6.ハリソン内科学
内容説明
内科を極めたいやる気のある薬剤師におすすめなのがこのハリソン内科学です。
この本の初版は1950年に出版されています。つまり、半世紀以上にわたって内科学の教科書として世界中で愛されている医学書ということです。
研修中の医者が使うこともある本で、内科に関する疾患の情報が十分すぎる量で書かれています。volume1とvolume2の2冊からなります。そしていずれもかなり分厚く3132ページあります。
もしこの内容を頭に入れることができたのなら、医者と同等の知識を得ることができる出来るかもしれません。しかし、すべて熟読するのは不可能だと思います。
使い方としては、業務で出会った疾患について書かれたところを読むことです。実際の経験と照らし合わせながら読むわけなので知識が定着しやすいでしょう。
このハリソン内科学は、目玉が飛び出るほどの価格です。でもこの本をがんばって読み込み、医師と対等に話せる薬剤師になりましょう。
おすすめの薬剤師
- 知識を取り入れることに貪欲な薬剤師
- 医師の診断における考え方を知りたい薬剤師
- 内科学を極めたい薬剤師

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7.最後に
以上になります。
薬剤師は、日々知識をアップデートする必要があります。
ひとつの本に固執することなく、多読・乱読していくことも大切です。
繰り返していくうちに、少しずつ知識として定着していきます。
おすすめの本があれば随時更新していこうと思います。