この記事では、タケプロンという胃薬の注意点について説明したいと思います。
看護師さんからの相談
先日、訪問看護師さんから相談を受けました。
薬を投与するときうまく薬が溶けずチューブのところで固まって詰まりそうです。
なんとかならないでしょうか?
というものです。
まず、この相談の意味を説明します。
胃ろうというのは、口から物が食べられなくなった人の胃へ、直接チューブを通して食べ物や薬を与える方法のことを言います。
簡易懸濁法(かんいけんだくほう)というのは、薬をお湯で溶かしてチューブに流して薬を投与する方法です。
つまりこの訪問看護師さんは、
『薬をお湯に溶かしてチューブから胃へ流したいけど、ドロドロになってうまく流れないからなんとかしてほしい。』
と言っています。
簡易懸濁法と粉砕法
経口投与ができない患者さんに対して薬を投与する方法は主に2つあります。
- 簡易懸濁法
- 粉砕法
従来はこの粉砕法という方法がよくとられていました。
この方法は、錠剤をミキサーで粉にして、これを水かぬるま湯などに溶かしてチューブに流すというものです。
しかし、粉砕法は、
- 薬のロスが生じる
- ロスが生じると効果が減弱する
- 調剤者が粉砕された薬を吸ってしまう
- 吸湿性などの問題で粉砕できない薬もある
- 粉砕して調剤するのは手間がかかる
カプセルが処方された場合は、脱カプセル(手作業で一つ一つカプセルをはずすこと)して中身を出す必要があるので、調剤が本当に大変です。
こういった理由で、最近は経口投与できない患者に対しては簡易懸濁法をとることが増えてきました。
簡易懸濁法は、薬をお湯に溶かしてチューブに流すだけなのでとても楽な投与方法です。
薬を溶かすときの注意点はタケプロン
簡単な簡易懸濁法ですが、この方法にも注意点がいくつかあります。
そのうちの一つがランソプラゾール(商品名:タケプロン)です。
ほとんどの薬はお湯でうまく溶けて、胃ろうのチューブをスムーズに通ります。
しかし、タケプロンをお湯で溶かそうとすると固まってしまうのです。
胃ろうのチューブをなかなかとらず、最悪つまってしまいます。
これは、タケプロンの医薬品添加物として使用されているマクロゴールという物質に原因があります。
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固まる原因であるマクロゴールとは?
マクロゴールという物質は安全性が高く、軟膏や坐薬の基剤、錠剤の添加物に使用されることがあります。
マクロゴールは分子量によって何種類かあります。
- マクロゴール200
- マクロゴール400
- マクロゴール1500
- マクロゴール4000
- マクロゴール6000
※分子量を示す数字が名前の一部になっています。
タケプロンの中に入っているマクロゴールはマクロゴール6000です。
マクロゴール6000の凝固点(融点)は59℃です。
簡易懸濁法で薬を溶かすお湯の温度は55度です。
簡易懸濁法で、お湯の温度が60度近くになってしまうと、マクロゴールが溶けます。
その後、お湯の温度が下がってくると散らばっていたマグロゴールが集まり再び固まります。
その結果、チューブを詰まらせてしまうのです。
解決方法は水で溶かすこと
訪問看護師さんから相談をうけた患者さんの薬をチェックしてみると、やっぱりタケプロンがありました。
タケプロンを簡易懸濁法で服用させる方法は簡単です。
タケプロンを水で溶かせばいいのです。
水で溶かせば、固まることはありません。
他の薬も飲ませる必要がある場合は、まず簡易懸濁方法を用いてお湯でタケプロン以外の薬を溶かします。
そして10分くらいすれば、薬が溶けたお湯の温度は室温(30度前後)に戻るでしょう。
ここにタケプロンを入れればいいのです。
マクロゴールは、水の中に分散し固まることはありません。
タケプロンを水で溶かした写真です。
水に入れて数秒で溶けました。
添付文書でマクロゴールが入っているかを調べる
薬剤師ではない人のために、薬にマクロゴールが入っているかを調べる方法を説明します。
それは添付文書(薬の説明書)を確認することです。
スマホのアプリでも薬の添付文書を見れるものがあります。
インターネットを使うのあれば PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)というサイトがいいでしょう。
①ホームページの上部にある「医療用医薬品」をクリックしてください。
②薬の名前を入力して検索してください。
今回は「タケプロンOD」と入力しました。
③「PDF」をクリックしてください。
④添付文書が開くので「組成・性状」を確認しましょう。
⑤添加物のところに「マクロゴール6000」が入っていることが確認できました。
まとめ
マクロゴール6000が入っている薬をまとめようと思ったのですが、多すぎてここには書けませんでした。
調べてみると1000個以上ありました。
薬を溶かして服用している患者さんで、うまく薬が溶けてくれない場合、マクロゴールが入っているかもしれないので一度調べてみるとよいでしょう。
ちなみに今回お話ししたタケプロンですが、粉砕はできません。
なぜなら、タケプロンは腸溶錠といって胃酸によって分解されないようにコーティングされているためです。
ミキサーにかけて粉砕してしまうと、コーティングがはがれて期待する効果を得ることができません。
以上になります。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
参考サイト:三洋化成工業株式会社