皮膚の炎症やさまざまな病気でステロイドが使用されます。
ステロイドはどのようなメカニズムで効果を発揮するのでしょうか?
この記事ではステロイドの作用機序について分かりやすく説明します。
この記事の内容
ステロイドの記事まとめ
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ステロイドの作用機序その1
- ステロイドが細胞内に入り込む
- 細胞質のグルココルチコイド受容体(GR)に結合
- 結合したものが核の中に入り込む
- 遺伝子の特定の部分(GRE:グルココルチコイド・レスポンス・エレメント)に結合
- 遺伝子の転写を促進または抑制
転写とは遺伝子からタンパク質を生成する過程のうちの一つです。
転写と翻訳という流れで遺伝子からタンパク質が生成されます。
転写の促進・抑制は、タンパク質の生成を促進・抑制につながります。
このタンパク質生成の促進・抑制がステロイドの作用の発現につながっていきます。
具体的には、抗炎症作用、免疫抑制作用です。
ステロイドの作用機序その2
ステロイドとGRが結合したものは、その他にも作用があります。
具体的にはサイトカインの合成を促進するAP-1やNF-κBといった転写因子にくっつきます。
サイトカインとは、細胞が分泌する物質で、体にさまざまな作用を及ぼすものの総称です。
転写因子とは、転写の過程を促進したり抑制したりするタンパク質のことです。
転写因子にくっつくことで、転写因子の働きが抑制され、IL-2、IL-6、TNF-αなどの炎症を引き起こすサイトカインの合成が抑制されます。
その結果、抗炎症作用や免疫抑制作用を発揮します。
アラキドン酸カスケードについて
もう一つのステロイドの作用機序を説明する前にアラキドン酸カスケードについて知っておく必要があります。
アラキドン酸カスケードとは、体内で行われる代謝経路のことです。
細胞膜にはリン脂質という物質があります。
このリン脂質はPLA2(ホスホリパーゼA2)よってアラキドン酸になります。
アラキドン酸は、体内でさまざまな作用を及ぼすPG(プロスタグランジン)やLT(ロイコトリエン)と呼ばれる物質になります。
プロスタグランジンとロイコトリエンにはいくつも何種類もあってこれらの物質が、炎症や免疫応答などに働きます。
アラキドン酸を発端とした化学反応が滝のように起きることからアラキドン酸カスケード(cascade:滝)と呼びます。
ステロイドの作用機序その3
上記のアラキドン酸を生成する作用をもつPLA2を抑制するのがステロイドです。
ステロイドがPLA2を抑制することで、アラキドン酸の生成が抑えられます。
その結果、プロスタグランジンやロイコトリエンの生成が抑制されます。
プロスタグランジンやロイコトリエンの生成が抑えられることで、抗炎症作用や免疫抑制作用を発揮します。
ステロイドの作用機序その4
ステロイドは、免疫細胞であるT細胞、B細胞、好中球、単球、マクロファージの働きを抑えます。
その結果、抗炎症作用や免疫抑制作用を発揮します。
ステロイドの作用機序その5
血管内皮細胞(内側の血管の細胞のこと)には、一酸化窒素合成酵素(eNOS)と呼ばれる酵素があります。
この酵素は一酸化窒素(NO)を産生します。
NOは抗炎症作用があります。
ステロイドはeNOSの活性を促進する作用があります。
その結果、NOの産生が促進され抗炎症作用を発揮します。
コメント
ステロイドは、遺伝子レベルで作用したり、遺伝子を介さず作用したりします。
作用機序は複雑で、すべての作用機序が明らかになっていません。
ステロイドの発見から半世紀以上たっていますが、まだまだ研究の余地が残されています。
ちなみにステロイドに関する本は、以下の2冊があります。
知識のない人で読みやすくて、情報量も豊富です。
以上になります。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。