この記事では、B型肝炎ウイルスについてわかりやすく説明します。
経過・感染経路・検査などについても書いたので参考にしてください。
はじめに
肝炎を起こす一つの原因として肝炎ウイルスがあります。
肝細胞が肝炎ウイルスに感染すると自己の免疫力によってウイルスを排除しようとします。
この免疫反応の結果、肝炎が引き起こされます。
肝炎を起こすウイルスには、
- A型肝炎ウイルス
- B型肝炎ウイルス
- C型肝炎ウイルス
- D型肝炎ウイルス
- E型肝炎ウイルス
があります。
日本人の肝臓病で多いのはこれらのウイルス性肝炎で、特に多いのがB型肝炎、C型肝炎です。
マイナーな肝炎ウイルスには、TTウイルスやG型肝炎ウイルスというものも存在します
この記事ではB型肝炎ウイルスについて、一般の人でも理解できるようにわかりやすく説明します。
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B型肝炎ウイルス
B型肝炎ウイルスは英語でHepatitis B Virusと書いて、略すとHBVです。
hepatitisは肝炎、virusはウイルスを意味します。
B型肝炎ウイルスにはA、B、C、D、E、F、G、Hの8つのタイプが存在します。
近年まで日本で多いのは、タイプBとCでした。
しかし、欧米のタイプAが日本ではやり始めています。
タイプAは慢性肝炎になることがあり、
タイプBは肝硬変や肝がんに移行することは少なく、
タイプCは慢性肝炎になることはほとんどありませんが30代から50代で肝硬変や肝がんに移行することが多い
と言われています。
B型肝炎ウイルスは、外側にあるHBs抗原(sはsurface:表面)と中心にあるHBc抗原(core:核)、HBe抗原(envelope:殻)で構成するDNAウイルスです。
感染経路
B型肝炎ウイルスは血液や体液によって感染します。(血液・体液感染)
血液や体液中のウイルスが、皮膚から浸入して感染します。(経皮感染)
感染経路には水平感染と垂直感染があります。
水平感染
水平感染とは、ヒトからヒトへ横に感染していくことです。
具体的には、まず性行為です。
現在では性行為による感染が一番多いです。
性行為の際に出血を伴ったり、精液や膣分泌液にもウイルスが存在するため感染します。
性行為以外では、ピアスの穴あけ、針治療・入れ墨・麻薬や覚せい剤の注射針・病院の注射針などで、B型肝炎ウイルスのいる血がついた針を使いまわしていると感染します。
昔は、輸血した際の血液製剤の中にB型肝炎ウイルスが混じっていることがあり、輸血を受けた人がB型肝炎ウイルスに感染してしまうこともありました。
現在では、献血の際のチェック体制が整っているため輸血による感染はほぼなくなりました。
垂直感染
垂直感染とは、親から子に縦に感染することです。
出産の際、母親から赤ちゃんにB型肝炎ウイルスが感染してしまうことがあります。
母子感染と言います。
産道で母親の血液が付着してしまうからです。
しかし、1985年から始まったB型肝炎母子感染防止事業により、現在では母子感染で赤ちゃんに感染することはほぼありません。
感染後の経過
B型肝炎ウイルスに感染したときどのような経過をたどるのでしょうか?
それは子供と大人で変わります。
子供
ここでいう子供というのは、まだ免疫機能が十分に備わっていない子供、だいたい幼稚園、保育園くらいまでの子供のことを言います。
子供がB型肝炎ウイルスにかかる(ほぼ母子感染による)と、ほとんどの子が何も起きません。
なぜなら、免疫機能がまだ発達していないので、そのウイルスを排除するために体が応答することができないからです。
そのためウイルスにかかったまま、体内にウイルスを保持し続けます。
これを無症候性キャリアといいます。(無症候:症状がない、キャリア:病原体を運ぶ)
そしてウイルスを保持している子供が大きくなると、免疫機能が発達し、ある日からウイルスを排除するために免疫機能が働き始めます。
これによって肝炎が起きるのです。
この肝炎の状態が6か月以上続けば慢性肝炎になりますが、慢性肝炎にならずそれまでに治ってしまうのが9割です。
残りの1割の人は慢性肝炎になりますが、ここから肝硬変に移行していくのはさらに1割の人です。
肝硬変から肝がんへの移行はさらにその一部の人たちになります。
大人
大人がB型肝炎ウイルスにかかった場合、急性肝炎(6ヶ月以内の肝臓の炎症)が起きますが、慢性肝炎になることはありません。
急性肝炎を起こしたごく一部の人に劇症肝炎が起きると死亡することがあります。
検査
B型肝炎ウイルスに感染しているかは血液検査で、B型肝炎ウイルスやその抗体が血中に存在するかを調べます。
B型肝炎ウイルスは肝細胞に感染しますが、感染すると血液中にそのウイルスが流れてきます。
HBs抗原
まず検査されるのはHBs抗原の有無です。
HBs抗原が、陰性(血液中に存在しないということ)ならB型肝炎ウイルスには感染していません。
HBs抗原が、陽性(血液中に存在するということ)なら現在B型肝炎ウイルスに感染していることを示します。
HBs抗原が陰性なら安心。
他の人から感染することには気をつけましょう。
HBs抗原が陽性でもまだ落ち込む必要はありません。
この時点ではまだ何とも言えないのでさらに検査をします。
HBe抗原
HBs抗原が陽性だった場合、HBe抗原も陽性なら問題ありです。
今現在体内にいるB型肝炎ウイルスは活動性が高く感染力も高いです。
ほんのわずかに血が付いただけでも感染することがあります。
なにも対処せずに子供を産んでしまうとほとんどの確率で赤ちゃんにも感染します。
そして肝炎を発症する可能性も高く、肝硬変などに進行していく可能性も高いです。
肝機能が正常だった場合は、定期的な検査をうけ、肝機能が異常値だった場合は治療が必要です。
HBe抗体
HBs抗原陽性、HBe抗原が陰性だった場合、HBe抗体が陽性であれば、体内にB型肝炎ウイルスが存在するもののウイルスの活動性は低く、感染力も低いです。
肝炎が起きていても治っていきます。
HBs抗原陽性、HBe抗原陽性の場合、とりあえずの目標は、HBs抗原陽性、HBe抗原が陰性、HBe抗体が陽性になることです。
この変化のことをセロコンバージョンといいます。
B型肝炎ウイルスを完全になくすことは難しく、ウイルスの活動性の低いセロコンバージョンに持っていくのが治療の目標になるのです。
セロコンバージョンは35歳未満に起きやすく、この状態になれば、ほとんどの人は問題なく過ごせます。
ただ、ごくまれに再び肝炎が起きる人もいます。
この場合は感染性も高く治療が必要になってきます。
セロコンバージョンが起きても、肝臓の値が悪く、下記に示したHBV-DNAポリメラーゼの値が高く、HBV-DNAが陽性の場合は肝炎が続いている可能性があります。
HBs抗体
HBs抗体が陽性なら、過去にB型肝炎ウイルスにかかったことがあることを意味し、今はもう治癒し今後このウイルスに感染することはないことを意味します。
B型肝炎ウイルスに感染している人の血がついても問題ありません。
こういう抗体を中和抗体と言います。
HBV-DNAポリメラーゼ
ポリメラーゼというのは合成酵素のことです。
つまりB型肝炎ウイルスのDNAを合成する酵素がどれくらいあるか検出します。
これによりウイルスが増殖しているかどうかわかります。
つまり、この酵素を調べることで、HBe抗原が陽性から陰性に変わるタイミングを予測することもできます。
HBV-DNA
PCR法という方法で、HBVのDNAを検出します。
B型肝炎ウイルスが存在するかどうかがわかります。
IgM-HBc抗体
値が高いと、最近B型肝炎ウイルスに感染したことを意味し、急性肝炎の診断に使われます。
HBc抗原はウイルスの内部にあるので血液検査で検出されません
潜伏期間
子供(乳幼児)が感染しても症状はでません。
大人がB型肝炎ウイルスにかかったときの潜伏期間は、1ヶ月~6か月です。
症状
最初は、発熱、全身倦怠感、咳、鼻水、筋肉痛、関節痛、頭痛などの症状がでます。
最初は『風邪かな?』と思う程度でしょう。
これらの症状は1,2週間すると治るのですが、代わりに黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)がでてきて尿が褐色になったり白い便がでたりします。
黄疸が起きるとかゆみも出てきます。
吐き気も出てきて食欲不振になることもあります
症状が出ない場合もあります(不顕性感染)
治療
急性肝炎の場合は、原則入院になります。
なぜなら体をやすめて横になることが大事だからです。
横になることで肝臓への血の流れる量が増えて栄養を送りやすくなります。
慢性肝炎の場合は、肝臓の働きを助けるための薬が処方されます。
漢方薬やビタミン剤が処方されることもありやす。
食事のとりかたも重要で、体を十分にやすめて疲れをためないことも大事です。
根本的に治すためには、インターフェロンや核酸アナログと呼ばれる抗ウイルス薬などが使用されることもあります。
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予防
予防の前に
まず、空気感染はしません。
間違った情報に惑わされないようにしましょう。
一緒の部屋にいても、体をさわっても感染しません。
また、HBs抗体が陽性の人は、B型肝炎ウイルスに感染することはないです。
安心してください。
パートナーがB型肝炎ウイルスに感染している
ワクチンを接種するといいでしょう。
接種するのはウイルスに感染していない方です。
B型肝炎ウイルスに感染した血を触ってしまった
免疫グロブリンを注射します。
免疫グロブリンとは抗体のことです。
医療関係者は血に触れる頻度が高いので事前に、ワクチンを接種すべきでしょう。
ワクチンは抗体ではなく毒性をなくした病原体を体に入れて、免疫細胞に抗体を作らせます。
医療関係者だけでなく、警察官や消防士など血を触れる機会がありそうな人はワクチン接種をおすすめします。
妊婦がB型肝炎ウイルスに感染している
母親がHBe抗原陽性だと、赤ちゃんに感染する可能性は高く、HBe抗原陰性の場合は確率は低いですが感染することがあります。
そのため、免疫グロブリンやワクチンによって赤ちゃんへの感染を防ぎます。
以上になります。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。