はじめに
慢性腎臓病(CKD: Chronic Kidney Disease)とは、腎臓の機能がゆっくり低下していく病気のことです。
この病気は、原因や症状にかかわらず腎機能がゆっくり低下していけば慢性腎臓病と言われます。
では、慢性腎臓病と診断されるための具体的な基準はなんでしょうか?
この記事では、慢性腎臓病の診断基準を簡単にわかりやすく説明します。
簡単に理解できるように下手ですが、漫画も付けました。
ご覧ください。
漫画~慢性腎臓病の診断基準~
以上が漫画になります。
これより以降には、漫画では説明しきれなかったことが書かれてます。
よければご覧ください。
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慢性腎臓病の診断基準
日本腎臓学会において慢性腎臓病の定義がされています。
それによると
- ①尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか
- ②糸球体ろ過量(GFR)が60ml/分/1.73m2 未満
- ①・②のいずれか、または両方が3か月以上持続する
とあります。
ただ、これを読んでも意味がわからない人が多いのではないでしょうか。
難しい言葉をかみ砕いて説明していきます。
尿異常
まず尿異常というのは、尿検査での異常ということです。
尿検査はみなさん経験があると思います。
会社や地方自治体の健康診断でよく行われているやつです。
この検査では、紙コップにおしっこをいれて、試験紙をつけてその色の変化を見ます。
とても簡単な検査で費用も安いです。
試験紙はドラッグストアなどでも販売されているため、自分で検査することも可能です。
試験紙の色の変化によって、尿の中にタンパク質や、血が混じっていないか(尿たんぱく、尿潜血)を調べることができます。
本来、尿にはたんぱく質や血がほとんど入っていないため、腎臓が悪くなると、この検査にひっかかります。
ひっかかると尿異常ということになります。
ただし、一過性の場合があります。
そして、尿が濃いか薄いか(濃縮尿、希釈尿という)で検査の結果がかわってきます。(濃縮尿は尿たんぱく、尿潜血の程度が高く、希釈尿のときは程度が低い傾向がある)。
そのため、正確に判断するには再検査が必要です。
再検査の結果、尿たんぱくや尿潜血が認められれば腎障害が明らかということになります。
画像診断
画像診断というのは、腎臓を画像でとらえて形態学的な異常(見た目上の異常)があるかどうか見ます。
画像診断でよく用いられるのが、超音波検査です。
なぜなら超音波検査が、簡単で安全だからです。
この検査は、腎臓に超音波を当てます。
そして、その跳ね返りをとらえ画像化することで腎臓の様子を見ることができます。
たとえば、超音波検査で腎臓のサイズを測定することができます。
サイズが小さい場合、腎臓が萎縮していることがわかります。
また腎臓が炎症を繰り返すと、線維化と言って腎臓の機能をはたさない組織ができることがあります。(線維化)
超音波検査での画像で、腎臓が線維化を起こしていると、その部分が白く見えます。
これを、エコーレベル(エコー輝度)が増強していると言います。
この状態は、腎臓の機能する部分が減っていることを意味します。
このような場合に、腎障害が明らかということになります。
画像診断には、その他にX線検査、CT、MRIなどがあります。
血液検査
血液検査で腎臓の機能を調べます。
このときに重要になってくるのが、クレアチニンと尿素窒素です。
血中にどれくらいクレアチニンや尿素窒素が存在するかを検査します。
クレアチニンというのは、クレアチンという物質が代謝されてできる物質です。
クレアチンは筋肉の中にあり、筋肉の収縮に必要な物質です。
不要になったクレアチニンを腎臓が尿として排泄しています。
また尿素窒素というのは、血液中の尿素を構成する窒素のことを意味します。
窒素の量を測ることで尿素の量を知ることができるというわけです。
尿素は摂取したたんぱく質や組織が分解されてできた物質です。
不要になった尿素を腎臓が尿として排泄しています。
つまり、クレアチニンも尿素窒素も腎臓が働いて尿として排泄しているわけです。
そのため、腎臓の機能が低下すれば、クレアチニンと尿素窒素は体の外に排泄することができず、
これらの血中の濃度が増えることになります。
クレアチニンの基準値
- 男性:0.5-1.1mg/dl
- 女性 :0.4-0.8mg/dl
尿素窒素の基準値
- 8-20mg/dl
この基準値を超えてくると腎障害が明らかと判断されます。
病理
腎生検で腎臓の組織を見ます。
腎生検というのは、針を刺して腎臓の組織を取り出し検査することをいいます。
取り出した組織を顕微鏡などで観察することで、直接腎臓の異常を見つけ出すことができます。
腎臓の病気は多岐にわたるため、腎臓の病気の確定診断のときに行われます。
ただし、この検査は、直接針を体に刺します。
そのため、出血もしますし、感染症にかかる可能性もあります。
そのため十分に検討したうえで行われる検査でもあります。
腎生検の結果、組織に異常が見つかれば、腎障害が明らかと判断されます。
糸球体ろ過量(GFR)
この言葉が一番わけわからないと思います。
僕もこの言葉を勉強するときは、理解に時間がかかりました。
まず糸球体とは、腎臓を構成する部位です。
ここに、血管が網の目のように集合しています。
ここから血液中の老廃物がでてきます。
と例えるとわかりやすいです。
茶こしからお茶が出てくるような感じで血液の老廃物が尿として排泄されます。
このとき、1分間の間に茶こしを通ったお茶の量を糸球体ろ過量というわけです。
単位は、dl/分 です。
dlはデシリットルのことです。10dl=1Lです。
腎臓が障害をうけると、茶こしの網の部分がこわれてくるのでうまくお茶が出てこなくなります。
そのため、この数値が低下してきます。
簡単にいえば糸球体ろ過量とは、腎臓の機能をあらわす数値ということです。
この数値が60未満になると腎障害が明らかと判断されます。
推定糸球体ろ過量
糸球体ろ過量を計算するのには、入院が必要で求めるのに非常に手間がかかります。
そこで考案されたのが推定糸球体ろ過量(eGFR eはestimate 推定するという意味)です。
これは一度の血液採取だけで値を求めることができる簡単なものです。
推定糸球体ろ過量を求めるための計算式はややこしいのす。
でも、自動で計算してくれるサイトがあるので簡単です。
性別、年齢、血中クレアチニン濃度を入力すれば、推定糸球体ろ過量を求めることができます。
実際は、この数値が60未満になるかどうかで腎障害が明らかかどうかを判断します。
推定糸球体ろ過量をもう少し詳しく
注意が必要なのは、上記のサイトででる値の単位がdl/分/1.73m2ということです。
1.73m2というのは、170cm、63kgの体表面積を表しています。
つまり、この計算式で得られる値は、この体格の人の場合に適用されるということです。
推定糸球体ろ過量というのは体表面積によって異なります。
そのためこの体格からかけ離れるような人では、ここで産出された値を補正する必要があります。
こちらのサイトが補正までしてくれます。
性別、年齢、血中クレアチニン濃度にプラスして、身長、体重を入力します。
この数値が60未満になれば腎障害が明らかと判断できます。
まとめ
いろいろ長ったらしく説明してしまいました。
簡単にいえば、腎臓に障害がある状態が3か月以上続けば慢性腎臓病ということです。
そして、腎臓に障害があるかどうかは、尿検査、血液検査、超音波検査などで判断するということです。
以上になります。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。